モーリシャス島のドードーからクニマスへ

2012.06.14

今回も、ある雑誌に寄稿した原稿を載せます。
「モーリシャス島のドードーからクニマスへ」
松山浩吉
年の瀬になって、日本の淡水魚が1種増えましたと新聞などでクニマスの事が報じられました。サケ科のクニマスはもともと日本の田沢湖にのみ生息する固有種だったが、水質の悪化などにより1940年代に絶滅したとされており、環境省のレッドリストでも「絶滅種」に指定されていましたが、2010年12月に山梨県の西湖で生息が確認されました。
個体確認は、京都大学の中坊徹次教授がタレントの「さかなクン」にクニマスのイラスト作成を依頼したことがきっかけとなり、「さかなクン」が西湖より取り寄せたヒメマスの中に色が黒いものがあり、中坊教授らと確認したところクニマスと判明。西湖には1935年に田沢湖からクニマスの卵が放流されたという記録が残っており、その卵がふ化し繁殖したものと見られています。
そうそう昨年は何やらCOP10といわれていたのを思い出し、そのCOP10とやらを調べて見ました。
COP10とは、「COP(Conference of the Parties)」とは、国際条約を結んだ国が集まる会議のことで、多様な生き物や生息環境を守り、その恵みを将来にわたって利用するために結ばれた生物多様性条約で、10回目の締約国会議「COP10」が2010年10月、愛知・名古屋で開催されました。
生物多様性これは非常に心地よい響きがあります。特に私の一番のお気に入りテレビ番組はHNKの「ダーウィンが来た」・ケーブルテレビでの「アニマルチャンネル」等での動植物自然番組で、毎週わくわくしながら見ています。
たいていの生き物の撮影は非常に困難で、撮影に1年を要するほどのものまであり、多種多様の動植物のドキュメンタリー番組は大変興味深いものです。
最近、手にした本がありました。少々ミー派ですが、滝川クリステルの生き物たちへのラブレターという一冊の本を手にしました。写真が美しく、彼女が綺麗に写っていたのでつい買ってしまいました。生物多様性の星にうまれてという内容で、その冒頭に1992年6月に、12歳になったばかりの女の子(セヴァン・スズキ)がブラジル、リオ・デ・ジャネイロでの地球サミットでのスピーチでこう述べていました。
「・・・・あなたたち大人にも知ってほしいのです。
オゾン層にあいた穴をどうやってふさぐのか、あなたは知らないでしょう
死んだ川にどうやってサケを呼びもどすのか、あなたは知らないでしょう。
絶滅した動物をどうやって生きかえらせるのか、あなたは知らないでしょう。
そして、今や砂漠となってしまった場所にどうやって森をよみがえらせるのか、あなたは知らないでしょう。
どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください。・・・・」
そのセヴァン・スズキのスピーチと滝川クリステルのかわゆい写真に心を打たれました。とくに最近日本でも里山問題があります。近年までは里山では多種多様の動植物たちがわれわれと共存し生活をしていました。子供のころは、よく近所のおじさん達に里山にカブトムシ・クワガタ・カンブン・ホタル等の昆虫採取によく連れて行ってもらい、楽しい幼少時代を里山で過ごしました。昨年、里山では、クマ・サル・イノシシといったこれまでには問題にならなかった動物が一挙にテレビを賑わしました。これも温暖化の為だとしつつ、聞き流していたのですが・・・・。
「私の世代には、夢があります。いつか野生の動物たちの群れや、たくさんの鳥や蝶が舞うジャングルを見ることです。でも、私の子どもたちの世代は、もうそんな夢をもつこともできなくなるのではないか?あなたたちは、私ぐらいの歳のときに、そんなことを心配したことがありますか。・・・」とセバスチャン・スズキは訴えた。
そう言えば、子供のころには、空き地に行けばバッタ・チョウ・てんとう虫や雨が降ればカタツムリなどと言った多くの虫を目にしたものです。春にはオタマジャクシ・蛙といったものまで近くの小川や池にいつでも見られたものです。しかし今ではオタマジャクシまでもが郊外の田んぼまで行かなくてはお目にかかれません。
ある有名な話に、モーリシャス島の飛べない鳥ドードーの話があります。
ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」で世間にその存在が知れ渡ったドードーは、決して想像上の動物やUMAではなく、実在した飛べない鳥です。 ドードーは、不思議の国のアリスの第三章、「ドードー競争と長い尾話」に登場します。
ドードーは、インド洋に浮かぶモーリシャス島に生息していたハトの仲間で、体長は1メートルほどで体重は20~30キログラム前後でした。島にはドードーの天敵となる動物はいませんでした。そのため、体はまるまると太り、翼は退化し、空を飛べない鳥となりました。モーリシャス島に人が入ってきてもドードーは逃げませんでした。それもそのはずで、天敵のいない島に生息していたので、そもそも「逃げる」という概念がなかったからです。人間による乱獲により、モーリシャス島のドードーは1681年の目撃が最後に姿を消した(なんとオランダ人がモーリシャス島に入植後150年で絶滅しました)。ドードーが残したのはそればかりではありません。
ドードーが島から消え去ってから、比較的最近になって不思議な現象が起こっていることが判明しました。モーリシャス島にある大木、タンバラコク(アカテツ科)を調べてみたところ、まったく若い木が育っていないのです。一番若い木でも樹齢300年、つまり300年前に誕生した木なのです。ドードーが絶滅したあとに誕生した木は一本もないのです。
タンバラコクの種はドードーに食べられ、そのおなかの中で傷つかないと芽を出すことが出来ません。ドードーがいなくなった今、タンバラコクはもう古木ばかりになってしまいました。人間が生き物の「共生」という関係を絶ってしまったためにおこった悲劇です。タンバラコクもドードー後を追って絶滅するでしょう。それを知るのに300年という長い年月がかかりました。
むかし昔ある所に、人間達が、大切な生き物たちを絶滅に追い込みました。
その数百年後、人たちは絶滅した生き物の後を追うように消えてゆきましたと、よくある昔話です。この話が笑い話で終わりますことを祈念しつつ、今年は本当に動植物・自然を大切にしたいと痛感した年の瀬でした。